疼痛の管理について

はじめに

ここでは、一般的な疼痛や骨転移癌でのペインコントロールについて述べます。

目次

総論
各論
術後疼痛管理
慢性脊髄損傷の痛み
癌疼痛管理
参考文献(手にはいりやすいものにかぎりました)
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総論
1)鎮痛剤の種類
  A)NSAIDs
  B)拮抗性麻薬
  C)麻薬 
2)投与時期
  A)疼痛時
  B)定期:持続  間歇
3)投与経路
    経口、経直腸、経皮、筋注、静注、硬膜外
    PCA(PATIENT CONTROLLED ANALGESIA)
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各論

●術後疼痛管理

 日整会66、12
1)アスピリン(静注)
 利点:呼吸抑制がない
 欠点:アレルギー
2)硬膜外モルヒネ
  利点
   1)意識が清明
   2)交感神経、運動神経麻痺なし
   3)長時間作用
  欠点
   1)他の経路のモルヒネより
      かゆみ
      尿閉
      幻覚 錯乱(特に老人)
   2)呼吸抑制
      ナロキサン静注
   気道確保
  術前から用いてもよい
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慢性脊髄損傷の痛み

 臨整外28、6
 1)くも膜下フエノールブロック
    10%フエノールグリセリン1.0mlを注入
 2)硬膜外脊髄電気刺激療法
    脊髄電気刺激装置medtronic社
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癌疼痛管理

日整会66、12
原則
 1)定期投与
 2)段階的に弱い順から投与
基本
 1)NSAIDs
 2)NSAIDs+モルヒネ
モルヒネ    
 1)速効性がある
 2)鎮痛作用が強力で有効限界がない
 3)各種経路から投与可能
 4)副作用が少ない
 5)呼吸数増加、頻脈にならない
目的
 1)夜間の除痛と安眠
 2)安静時の痛み除去
 3)体動時の痛み除去
投与開始時期
 1)経口や注腸の効果減
 2)非麻薬系の薬が1ー2回/日になったら開始
製剤の選択
 いずれもよく水に溶ける
 効力は塩酸モルヒネ=硫酸モルヒネ
 吸収:塩酸モルヒネ水>アンペック坐剤>MSコンチン
注意
 モルヒネは胃からは吸収されない
副作用
1)癌疼痛の場合は精神依存は生じがたい
  身体依存は漸減法で対処できる
   症状 頻脈 発汗
 例
 30Mg/4hなら
 20mg/4h 3日→15mg→10mg→5mg→
         投与間隔6ー8時間  →カット
2)呼吸抑制
 肺に病変がなければ問題ない
3)吐き気、嘔吐
   予防:セレネース1.0−1.5mg/日 就眠前
4)便秘
  用量依存ではない
  耐性は出来ない
モルヒネと同時投与
     ラキソベロン
     プルセニド 1ー10錠/日
  2ー3日なければ
   レシカルボン坐薬
   グリセリン浣腸 
5)傾眠
  投与開始時に多い
  2ー3日は様子を見る
6)錯乱幻覚
  老人に多い
  セレネース1.5ー5mg/日
 だめなら投与経路を変える (硬膜外)

投与の実際

 1)モルヒネ内服
   投与開始 5ー10mg/回 4時間毎
   効果判定 24時間毎
   増量   1.5倍にする(50%アップ)
   5→10→15→20→30→40→60→80Mg
 MSコンチン
   最初から投与するなら
 初回量 20ー40mg/回
        12時間毎 (午前と午後の同時刻 たとえば午前7時と午後7時)
 効果判定 24時間毎
 増量   1.5倍にする(50%アップ)
     20→40→60→80→100mg
      大体は5ー30mg/回以下でコントロール可能
 注意:噛砕いたり、水に溶かすと、除放性が失われる
 奇数錠投与:夜間投与を多くする
 副作用は用量依存ではない

2)モルヒネ坐薬
 アンペック坐剤
  適応 経口不能のとき
     初回 10mg/回 8時間毎
  効果判定 24時間毎 
  増量  夜を20mg/回とする→20mg/回 8時間毎
  禁忌 下痢、下血あれば無理

3)モルヒネ皮下注 持続点滴
適応 食事の量 間隔が不安定な患者

 モルヒネ内服60mg/日よりの変更
 20ー30mg/日持続静注
実際
 生食100ml+モルヒネ20mg
  当初4ml早送り
  4ml/H
 効果判定 12ー24時間毎
 量が決まったら
  IVHに混入してよい
 効果がなければ
   静注では30分で効果出る
 12回/12時間早送り必要なら
 8ml/Hにする
 生食100CCに80mg投与
 スピード4ml/h
副作用対策
 幻覚 不穏、興奮など
 NSAIDsを持続投与すると減少する
 経口に切り替えるとき
 1)注射量の半量の2ー3倍量+半量注射
 2)ついで全量内服

4)激痛
 適応)急激な増強あるとき
    消化器系の副作用強いとき
 硬膜外モルヒネ注入
  量は経口、系静脈よりも少なくてよい

5)モルヒネでコントロールできない
 1)ケタミン持続点滴
   125ー250mg/日
   5ml/h
  副作用
   精神症状
   予防 ドロペリドール10−20mg混注
6)骨転移
 ステロイド 30ー60mg/日(プレドニン)
 カルバマゼピン100mG 就眠前
 硬膜外ブロック(局麻剤)
 カルシトニン筋注 or 静注
     カルシトニン 40u/6h 毎日 im
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参考文献

1)骨転移の痛みと治療 檀健二郎 真興交易医書
2)癌患者と対処療法 創刊号1、1、1989
3)痛みの治療,研修講演,日本整形外科学会誌,66,12,1276,1992,
4)ペインクリニック,特集,整形外科MOOK,57,1,1ー268,1989,
5)癌性疼痛,治療脊椎固定STAGE分類,臨床整形外科,28,3,259ー302,1993,
6)ペインクリニック,手術麻酔疼痛管理,整形外科MOOK増刊,2,B,202,1993,
7)脊髄損傷,疼痛リハビリテーション,整形災害外科,33,7,853,1990,
8)骨肉腫,硬膜外ブロック麻薬ペインクリニック,整形外科,42,5,789,1991,
9)脊髄損傷,対麻痺,幻肢痛ペインクリニック,臨床整形外科,28,6,691,1993,
10)神経ブロック,麻酔疼痛管理,研修,日本整形外科学会誌,68,1,62,1994,
11)反射性交感神経性ジストロフイー,局静,整形外科MOOK増刊,2,B,153,1993,
12)痙性麻痺脊髄損傷,フエノールブロック,整形外科MOOK増刊,2,B,145,1993,
13)痙性麻痺脊髄損傷脊損,硬膜外通電療法,整形外科MOOK増刊,2,B,149,1993,
14)脊椎手術,脊椎術後管理,持続硬膜外ブロック,整形外科,45,3,373,1994,
15)頚椎硬膜外ブロック,頚椎症性脊髄症,整形外科,45,4,482,1994,
by 本田忠
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