股関節の悪い患者さんへ
(主に保存的治療について)
はじめに
このパンフレットは主に、変形性股関節症の患者さんのために書いたものですが、他の股関節疾患、たとえば大腿骨頭壊死、大腿骨頚部骨折など、他の股関節疾患でも利用できます。基本的な考え方は同じです。
変形性股関節症の特徴
日本人の場合、生まれたときの先天性股関節脱臼が、年齢と共に、変形性股関節症に移行した方が大部分です。すぐなおるような急性の疾患とは違います。従って、残念ながら、長期間、悪い股関節と、つきあうことになります。大事なことは、病気に対する正しい知識を身につけて、病気に負けず、あかるい生活をおくることだと思います。
変形性股関節症の治療の原則
1)股関節にかかる負荷を減少させる
1)荷重の減少
体重減少、杖、筋力増加
2)股関節の接触面積の増加
各種骨きりなどの手術的治療
2)股関節自体を取り替える
人工関節
つまり、股関節にかかる力を減らすことが大切になります。
各論
保存的治療
変形性股関節症に対する、正しい知識を身に付ける
変形性股関節症は、最初の述べたごとく、罹病期間が長く、完全な治癒は望み
難い。従って、日常生活とか、病気に負けない心構えが大切。賢い医者への
かかりかたも必要。病気の知識を身につけましょう。
推薦図書
「変形性股関節症の人のために」村瀬鎮雄編著 ぶどう社
これは前半を患者さんがかき、後半を医師が書いています。
安静
痛みが出れば、安静にする。牽引が有効です
減量:栄養指導
非常に大切です。これだけで、手術までの時間をのばすことが出来ます
変形性股関節症の患者さんは、どうしても運動しないので、肥満傾向になります。
体重が20Kgへれば、荷重計算では、半分ぐらい手術をやったのと、同様な
効果が出ます。股関節の手術も基本的には、股関節にかかる力を減少させるのが
目的です。人工関節でも、ゆるみを遅らせるためには、体重維持が大切です。
できれば入院中などに、食事療法を徹底して、覚えてください。
外来でも、希望なら当院の栄養士さんに紹介します。
基本
低カロリー 600ー1200キロカロリー/日
高蛋白:1.0−1.5g/Kg
低糖質:ただし最低でも100g/日
脂肪:植物性脂肪(不飽和脂肪酸)
目標体重
標準体重にしてください。標準体重は下記の推薦図書の中に、グラフがあります
それで見てください
推薦図書
食事療法の本
「毎日の食事のカロリーガイドブック」香川芳子 女子栄養大学出版部
「食品80キロカロリーガイドブック」香川綾編 女子栄養大学出版部
これらを見ながら、1カ月程度、毎日の食事のカロリー計算をすれば、すぐなれます
薬物治療
:消炎鎮痛剤
股関節が痛いときは、痛み止めと、筋の痙攣をとる筋弛緩剤と、胃腸薬を、
出します。薬は、疾患の性格上、定期的かつ長期間のむことになります。
上手に使えば痛みのない快適な生活をおくれます。かなり痛いときは、坐薬
をうまく利用してください。薬は、積極的に利用すべきです。または痛いと
きだけ内服剤を、不定期にのんでもかまいません。
内服の、副作用として胃腸障害に注意してください。胃が痛くなったら、
無理してのまなくて結構です。医師にご相談下さい。ただ消炎鎮痛剤は、
現在50種ぐらいあります。どれかは、体にあう可能性があります。
副作用が恐くて、薬をのまないのは、賢いやり方ではありません
歩行時の杖の使用
股関節にかかる力を減少させるのが目的です。悪い方の足と反対にもって
使用してください。杖に体重を10Kgかければ、股関節の負荷を
60%減少できます。人工関節術後も大切。ゆるみをおくらせることが出来ます
ちなみに荷物は、悪い方の手で持つことです
ほしい方は医師にご相談下さい
下肢の持続牽引
安静の目的で使用します。ベット上で下肢に重りをつけて、牽引します。
一般的には、入院して行なう治療です。これを自宅で準備しておけば、一生の
間で入院する回数を少なく出来ます。痛いときに夜間だけでも使えば、かなり
楽になると思います。ただし、ベットが必要。それも足側が、穴があいてない
といけません。ほしい方は医師にご相談下さい
温熱療法
股関節が痛いときに温めると、楽になることがあります。お風呂、温泉がよい
と思います。病院ではホットパック、極超音波などを使います。
筋力強化
リハビリとは、自分で努力することです。マッサージだけやって、楽になった
では、いつまでたっても直りません。下肢の太さを、左右同じくなるまで、自分で
頑張るべきものです。理学療法士にきちんとおそわって、自分でも毎日、根気良く
股関節周囲筋群の強化を、行なってください。特に股関節外転筋群をきたえてください。跛行の予防のためです。
可動域増強訓練
関節の動きをよくしないと、日常生活の種々の動作が不便になりますし、手術後も苦労することになります。
補装具
脚長差が著しいときは、補高靴を用います。ただし、筋力低下のみで、跛行になっている方もあります。
その場合は、つける意味はありません。筋肉を鍛えてください
症状の軽い方は、安静と消炎鎮痛剤ぐらいでじゅうぶんと思いますが、長い経過の間に
は、結局、今までのべた、治療法を、すべて行なうことになると思います。いずれにしても、大事なことは、現在の股関節の機能を、悪くしないように、日常生活を気をつけることです。
いつ、手術に踏み切るか
変形性股関節症のように、慢性の疾患で、徐々にしか悪くならない患者さんは、いったん、保存的治療になれば、なかなか、手術に踏み切れない方もあると思います。疾患の程度、年齢によって大きく異なりますが、
上記の保存的治療を、きちんとこなしても、
1)股関節の痛みと、動きの悪さが、我慢できなくなったとき。
2)痛くて、日常生活に著しい制限をせざるを得ないとき。
3)1カ月に2ー3日股関節が痛くて寝込むようなとき。
4)日整会の判定基準(推薦図書に書いてあります)で50点以下のとき
このような状況になったときは、医師と相談してください。
痛いのを我慢して、いたづらに、保存的治療で頑張るのも考えものです。
我々は進行した方には、50歳をこえれば、ある程度、積極的に手術をしています。
これは、人工関節の、成績がよいためです。手術は、術後のリハビリを含めて
ある程度、体力を必要とします。手術は75歳ごろまでには、行なっておく方が、
よいでしょう。
また、心疾患とか、糖尿病とか、合併症がある方は、すこし早めに、手術に踏み切った方がよい場合もあります
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