腰痛について

 目次

腰は解剖上は、何で出来ているか
腰は日常生活で、どの様に動いて、どのくらい負担がかかるのか
どの様にして腰の障害は起こるか
治療では何が大切か

腰は解剖上は、何で出来ているか

kosi腰は、筋肉(腹筋と背筋)と、骨(腰椎)でできています。
家にたとえれば、腰椎が柱で腹筋、背筋が壁です。それで屋根(上半身)をささえているわけです。
壁か柱にガタが来れば、屋根を支えきれなくなり、腰痛が来ます。
なお下肢の痛みや痺れは腰で脊髄の神経根が圧迫された証拠です。

その場合は腰椎椎間板ヘルニアとか腰部脊柱管狭窄症と言う病名になります。


腰は日常生活で、どの様に動いて、どのくらい負担がかかるのか

 腰椎は、運動の方向は、三次元で、屈曲ー伸展、側方屈曲、回旋の
3つの運動があります。実際の運動は、この3つの軸が組み合わさった
、 複合運動です。
たとえば単純なおじぎでも、腰にかかる負担は、体重の3倍程度、
150Kgにもおよびます。500Kg近くかかることもあるようです。
従って500kg程度の力に耐えるだけの、構造が必要になります。

どの様にして腰の障害は起こるか

外的な腰への負担

日常生活では、様々な負担が腰にかかる。無理な姿勢による、腰への
負担
腰へ、過剰な力が加わったり、何度も小さな力が加わると外傷や、障害が
発生するわけです。

身体自体の問題
年齢や体型の崩れ(肥満)による、柱の脆弱化(腰椎の変形、骨粗鬆症)
壁(筋力)の衰え。
 大きくは、この2つの要素で腰への様々な障害が発生するわけです。
腰へのストレスのかかる姿勢をさけ、腰の筋力が強くならなければ、
500Kg近い力を、支えられないことになります。
 腰への負担のかかる仕事をしている方、体型の崩れた方は、一旦腰痛
になれば、なかなかなおらない(再発を繰り返す)のも、これがあるか
らです。

精神的ストレス
また慢性の腰痛の場合は、精神的ストレスも関係していることがあります。
特に若年者の慢性の腰痛に多い原因の一つです。


整形外科における検査の考え方

整形外科疾患では、レントゲン上で正常でも症状がある方、あるいはレントゲンで

所見があっても症状もない方もいます

○単純レントゲン写真

質問:腰のレントゲンで正常といわれましたが、腰痛が強く薬を飲んで
も直らないので、一度だけ行ってやめてしまいました。
どうすればよいのでしょう。一生腰痛が続くのでしょうか?
回答:
 これは、よくおこる誤解です。たとえば、腰というのは前に説明した
ごとく骨と筋肉でできています。骨に異常がないから問題ないわけでは
ありません。医師は「骨の形態」が正常であるといっているに過ぎませ
ん。腰痛は多くは、肥満や運動不足や、不良姿勢が原因で起こります。

レントゲンの異常と症状は直接の関係は多くはありません。また逆に中
年以上の方が、腰痛で受診されてレントゲン等を取れば、下肢のしびれ
などがなければ、多くは「変形性脊椎症」という病名がつきます。同世
代の方の腰のレントゲン写真をとれば、症状の有無に関係なく、大体同
じような骨変化を示します。では同じような腰椎の変形のある方が、す
べて腰が痛くなるのかといえば、そういうことはありません。確かに変
形があれば正常の方よりは腰痛がきやすいとはいえますが、痛みは使い
すぎや筋力不足などの日常生活のなかでの問題で起こることが多いわけ
です。従って、安静や薬物治療、その他腹筋を鍛えるなどの、いろんな
努力をすることで、症状のない快適な生活をおくることができます。
レントゲンで変形があるから、かならず症状が出るとはかぎらないわけ
です。

○MRI検査
質問:腰のMRIという検査をしたら椎間板がでているといわれました。
これはヘルニアでしょうか。だとすれば手術しなければいけないのでしょ
うか。
回答:
 腰のMRI写真で椎間板が突出しているだけでは、特に問題はありま
せん。これは症状のない方でもMRI等を検査すればよくある現象です。
脊椎というのは単なる入れ物であり、大切なのはそのなかの神経なので
す。神経が椎間板で圧迫されれば、下肢痛や痺れなどのいろんな症状が
出ます。下肢痛が、薬物治療その他のいろんな治療で直らなければ、そ
こではじめて突出した椎間板の切除などの手術も考慮されます。下肢痛
などの症状がなく、椎間板の突出のMRI所見だけでは、あまり病的意
義はありません。したがって、椎間板の突出があっても、それが直らな
くても、神経根が押されなくて下肢の症状がなければ特に問題もないし
治療の必要もありません。

まとめ
形態学的変化と機能的障害は必ずしも一致しません。骨の形態が正常でも、
痛みがあるなら、きちんと治療すべきです。また薬物治療を4-5日続けて
も痛みが軽快しないときは、多くは安静不足です。安静度を上げることです。
また坐薬等より強力な薬や、バンド等を処方してもらってください。
 
 また逆にレントゲンで骨の形がおかしくても、症状がなければ治療は必要
ありません。当然検査もそれ以上は必要ありません。症状があるなら継続的
に治療することはもちろんです。慢性の場合が多いので、直ぐ直らない場合
は、継続的に通ってください。徐々に厳重な治療に移行します。

 MRIなどでヘルニア所見を見つけられても症状がなければ何等困らないわけ
ですから、当然治療も必要はないわけです。

 

治療では何が大切か

 様々な治療法がありますが、基本的には2つに集約されます
外的な力による、腰への負担を減らす
腰へは大変な力がかかるわけですから、負担のかからない姿勢を覚える。
これだけでも100Kg近い差が出てきます。
日常生活で、細かい注意があります。整形外科でご相談下さい
激痛のときは、腰への負担を軽くする必要がありますので、
寝ていなくてはいけません
慢性の腰痛の場合の注意もあります。
柱と壁を鍛える
 A)柱(腰椎)を鍛える:
 若年者なら、腰椎分離症があれば、腰椎バンドをつけます
 高齢者なら、骨粗鬆症があれば、骨を強くする薬を飲みます
 運動でも骨は強くなります。
 B)壁(腹筋と背筋)を鍛える
 これは筋肉を鍛えるわけです。
 水泳や腰痛体操を行なって、ください。
その他の治療(補助療法)
薬を飲む、マッサージを行う。電気をかける、腰の牽引をする。
 これらは、いずれも一定の効果があります。
しかし根本的になおそうと思ったら、やはり原則通りに、正しい腰痛
の知識を身につけ、運動をきちんとこなさくてはいけません。
治療は根治的治療と対症療法に分けられます。腰痛のような慢性疾患の
根治的治療はこれ以外にはありません。その他の治療はすべて対処療法
といいます。 念のためですが、だから対症療法は必要ないといっているのではなくて
根治療法と対処療法は車の両輪です。どちらが欠けても
快適な生活は送れません。どうか賢い、治療を行ってください。
奇跡的な治療は存在しません。地道に行うほかないのです。

Home

Copyright 1996 Honda orthopaedic Clinic