スポーツ医学に関する質問

Q75.熱射病と熱中症などの見分け方と対応の仕方。

(熱中症について)

A:暑い環境のもとで発生する障害を総称して熱中症といい、通常熱失神、熱疲労、

熱けいれん、熱射病が含まれ、スポーツで問題となるのは主として熱疲労と熱射病で

ある。熱射病は死亡率が高く、夏のスポーツ活動で起こりやすく毎年事故が報告され

ている。熱中症は適切な予防措置によって防げるもので、事故が起きた場合には指導

者の責任は免れ得ない。熱中症は高気温・高湿度の時に発生しやすいが、それ程暑く

ない4月や5月でも気温が25度以上になると運動中の死亡事故が起こってくる。運動

自体が熱を発生するからです。体温は環境条件にかかわらず一定の範囲内に保たれる

ようになっている。代謝による産熱と体表面から逃げていく放熱が体温調節中枢によ

ってバランスを保っている。産熱は肝・筋が発生の主な場所で、放熱は輻射、伝導、

対流、蒸散によって行われる前三者は皮膚温と外界温の差によって行われるが、蒸散

は発汗によって促進され、その影響は温度の影響を受ける。高温環境下では皮膚温と

外界温の差は減少ないしマイナスとなるため放熱はもっぱら発汗によって行われる。

高温・多湿の条件下では大量に発汗しても蒸散の効率が悪いため容易にうつ熱が生じ

る。

熱疲労は脱水によるもので、汗をかいて水分の補給が不十分の時に起る。全身の

脱力感、倦怠感、めまい、悪心、頭痛などが主な症状ですが、ひどい場合には失神す

る。体温の上昇は著明ではなく、多量の発汗があり、血圧は低下し、頻脈、皮膚は蒼

白となる。涼しい場所に運び、衣服をゆるめて頭を低くして寝かせ水分、塩分を補給

すると速やかに回復する。熱射病は激しい運動で発生した熱が放散できず異常な体温

上昇により体温調節中枢に異常をきたし頭痛、めまい、嘔吐などの症状から始り、運

動障害、錯乱、昏睡に至る。けいれんなどの不随意運動を伴い熱中症の中で最も重い

病態であり、脳・心・肺・肝・腎などに障害を起して死亡率も高い。熱射病では現場

の処置が生死を分けるといわれ、40度以上の高熱など熱射病が疑われたら直ちに冷却

処置を開始しなくてはならない。

熱中症の予防について日本体育協会では運動中の熱中症予防のための「指針」を出

している。それによると気温が24度未満なら「ほぼ安全」、それを越えたら「注意

」で積極的に水分補給、28度以上なら「警戒」で30分ごとに休息、31度以上では激し

い運動はやるめ。35度以上では運動を中止するとなっております。

熱中症を起こす原因としては、気温・湿度・風速・反射日光などの環境の要因と健

康状態、体力、馴化の状態、水分補給などの個の要因と運動の質、量、休憩のとり方

など運動の要因が上げられ熱中症の予防にはこれら各要因に対して対策を立てること

が必要である。

1.環境条件を把握し、それに応じた練習、水分補給を行うこと。

2.暑さに慣れさせること(暑熱馴化)

暑熱に対する耐性は慣れによって異なる。馴化は暑さの中で徐々に運動すること

で1週間前後で達成される。

3.健康状態チェック

基礎疾患をもっている人に熱中症は起り易いが、メディカル・チェックで異常が

なくとも睡眠不足、疲労、下痢、発熱などその日の体調をも把握しておく。

4.運動前後での体重測定

体重の3%(2・)の減少は水分の補給が必要です。

5.体力、運動能力の考慮

体力や運動能力の劣る者ほど事故を起こし易いし、真面目に頑張りすぎる人も危

ない。

6.指導者の監視

練習中にふらついている者、動きのおかしい者、頭痛などを訴えてるものがあれ

ば休ませる必要があります。

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