21世紀の医師会

はじめに
 21世紀の医師会 インターネットの普及によりどの様に組織はかわっていくのかを考えてみましょう
インターネットの普及により、必然的に医師会の組織改変が起こってくると思われます。
○現在の基本認識
1)地域医療における医師会の活動は今後も増える
国の事業はどんどん縮小する。 いきおい事業は地域に丸投げされる。
2)医療は地域単位(二次医療圏)で考える
しかも広域で考えざるをえない。医療は患者さんあってのもので、患者さんは2次医療圏を
基本として動きます。すべての対応は2次医療圏を基本として考えるべきであろう。
介護保険はその流れにある。現在580ある医師会は統廃合し、200前後としてできる
だけニ次医療圏と一致させ、地域の包括ケアの受け皿となるべきである。同時に医師会の
広域化により、体質改善を図る。広域化によるデメリットはネットワーク組織化で解消されうる
3)アカウンタビリテイ
また高度成長は終わりを告げ、同時に高齢化社会が出現。財政状況は厳しく
医療の専門化として、一般へのアカウンタビリテイがますます重要性がましてきている。
2)医師会は強固にしないと時代に対応できない われわれの生活を守るにはこれが大切。
唯一の同業者団体。
 
○医師会としての組織の一体感を得ることがまず大切になる
1)濃厚な関係を作る。おたがいを良く知る。
 とにかく毎日会う事が一番。これに尽きる。お酒やゴルフもよいが それだけでは不十分。
2)情報や問題意識を共有化する
 理事は孤独感があり(協力しない)、使命感だけでやっている。 (俺がやらなければ) 
皆の小間使いであるという意識もある。 自分で動いている意識は案外ない。
上からの命令を実現する 意識だけ。達成感だけがある。自己満足。
 末端会員は理事だけが情報を持っていて、われわれにはない。したがって意思決定に参加して
いな い。情報は整理されてからはじめて会議でもれ聴こえるだけで その前後は参加していない。
医師会活動は退屈なあらかじめ決められた会議しかな く、 仕事は命令される雑用だけ。
とうてい帰属感を持ち得ない。疎外感を持っている。 (どうせ会議はあらかじめ決まっている。
勝手にやれば?)
3)負担は平等であらねばならない
 医師の大衆化。過当競争で昔の旦那衆はいなくなった。 皆借金を抱えている。皆さん忙しい。
負担はできるだけ 平等にして、会議等のでばる時間は少なくする。 自分の仕事にまい進してい
ただきたい。 要するに時間を合理化する。 医師会というのは緩い組織である。会社とは違う。
病院とも異なる。 これは個人営業の多い医師会では当然なのではないでしょうか。 皆さん
商売が大変でしょうし、使命感だけでは活動はできない。 商売がなりたって初めて医師会がある。
一方国の丸投げで、昔より医師会の地域での活動はどんどん増えて きている。 この組織の特
徴を踏まえて、相反する要求をすべて満たすには、現在の 委員会制度をやめて、理事を
減らし、ネットワーク組織にしていくほかはないでしょう。 バーチャル医局が軌道に乗れば、
ネットで医局会も開けるわけですから バーチャル会議ができる。現在の会議はMLだけでほとん
ど代用できる。 医師会にいって忙しいときに時間をつぶされなくてすむ。 なによりも出張が減る。
時間空間関係ないですから。交通費などの経費が浮き ますね  医療を取り巻く情勢は厳しく、
より一層の一般の方や、マスコミへの宣伝を求 められている。組織の一体感のより一層の構
築と宣伝と同時に行わなければ いけない。現在の医師会の問題は、理事と一般会員の意識が
ずれている。一般会員が 参加意識が持てないきらいがある。会の意思決定の過程が見えてこ
ない。 問題発生から意思決定の経過そのものをオープンにしないと、参加意識は育たな いし、
よくわからないから興味がないということになる。
○医師会の委員会の廃止とネットワーク制への移行
 現在、一般の会社では部課長制度から事業部制、マトリックス制、ネット ワーク制度への発展
の過度期です。もとより 仕事は会議だけで済むものではなく、その前後に延々と纏め上げる作業
がある。リーダーと事務の作業。この経過を参加者全員に常にMLで流せば、参加者 全員が、細
かい決定までの流れを把握できる。要するに事業の意思決定すべ てに全員参加できる。すばや
い意思決定と、組織の目的の明確化 同時に意識の共有も図れる。組織でなにが大切かといえば
一体感ですよね これが現在一番進んだ組織経営方法論です。もちろんネットワークの普及と有効
利用が前提ですが。 医師会なら、予算配分の硬直した委員会制度の廃止、事業部制として、せい
ぜい3-4個にまとめる。大きく4つぐらい外務と内務と医療と福祉、委員会は 解体しプロジェクトの
みの一過性のもののみとする。恒常的なのは部門単位 で管理する。あるいはマトリックス制の部
分導入。ついでネットワーク性への 筋道。組織が変わるということですね。予算は4分割にするだ
け、あまった 予算は新規事業につぎこむ。何よりも退屈な会議に出なくて全員参加で十分審議を
尽くせるシステムができるのが大きい。 
○ネットワーク制度がなりたつ要件としては
1)技術的制約はない
 各事業部でメーリングリスト一本あればよい。これでできる。できれば各事業部でホームページ
をつくり、データの蓄積と一般への宣伝をは かる。導入経費はほとんど年間数万程度。ほかの余
計な仕組みはいらない。 従って技術的にはもう実現している。
2)全員参加
 少なくとも50%の会員のネットの普及率は必要か。最も大切なのはリーダー である理事の普
及率とご理解。仕事は問題の発生から、事務さんからのその時、 その時の連絡、会議の召集と
決定。その後の運営。その「すべての作業経過」 が、メーリングリストで、リーダーと事務により
書き込まれなければいけない。リーダーである理事が十分にその意義と、目的を理解し、なに
よりもメールを 使いこなさければ、これはなりたたないシステム。理事が個人メールを使っては
いけない。すべてメーリングリストへ流す。あとは参加委員が、継続的に積極的に参加し討論
できれば会議はなりたつ。 要するにメーリングリストへ書き込むだけのテクニックがあれば
あとは普及率の問題にすぎない。 「どこで誰が何をしているのか」についての「こと(出来事
=event)」と「ノウ フー (know-who)」の簡易データベースを継続的に構築することです。

これは理事が 行うしかない。まあ良く書き込まれたメーリングリストをきちんとデータベース化
され、自動的にホームページに載ればすむことです。これも簡単にできる。 医師会文書のデ
ジタル化も当然含まれる。それが同時に、一般の方への宣伝 にも利用できる。会で発生す
る文書はデジタル化してデータベース化しなけれ ばいけない。  
現在全国の医師会のネット参加は7000人ぐらい。個人でしている方を入れ ればもっと多い
はずですが。先進地域は50%に達しだした。アメリカの現状は 家庭の普及率が50%を越
しています。日本も直ぐこれくらいはいきそうです。
○医師会の広域化
1)患者さんは2次医療圏で動き、必ずしも医師会内では動かない
2)介護保険は地方自治体の財政状況のため広域化している
3)医師会は財政基盤の脆弱化もある。何らかのテコ入れはしたほうがよい
地域包括ケアを考えれば自治体に対する受け皿として、また介護の市場化に対抗して
基礎体力をつけるために統廃合すべきであろう。統廃合によるデメリットは域内の
交通費の増大。会議開催が難しい等があげられるが、これはネットーワーク組織になれ
ばかなり解消される。
まとめ
1)医師会組織はネットワーク組織に変化していかないと時代に対応できないと思われる
2)医師会の広域化
 ネットワーク組織は医師会単位でなく2次医療圏で組むべきである。
医療はすべて2次医療圏を基本として考える。組織が変われば医療も変わる。 医師
会の組織改変は同時に医療の合理化につながる。 二次医療圏一患者一カルテを目
指すべき。病診連携も介護も取り込んだ地域の包括ケアという概念を確立する
そのためには医師会を広域化し統廃合すべきである
3)会員間のネットワーク組織のみでなく、一般へのアカウンタビリティを考えれば、一般人
などもふくめたネットワークも考慮しなければいけない


組織論

会社などでは部課制の廃止と事業部制やマトリックス制への変換が行われてい るようです。
医師会は上記のような特徴はあるわけですから、会社組織とは異なり ますが、営利企業の
優れた組織論は参考にすべきである。医師会の委員会制度という のは職能部門制組織に
似ているのでしょうか? 職能部門制組織は専門的な知識を必要とする同種の関連の業
務ごとに職能別に専門化、部門化さ れた組織を単位とする形態で専門化が容易、組織の
統制維持がしやすい。しかし 組織が硬直化しやすい。決定、調整がトップに集中し、創造
的役割が果たせない 。業務間のコミュニケーションが欠けやすい。これだと、ややもする
と恒常的対応(能率の向上)と動態的対応(変化適応性)の両要求に応えられない。 その
ために会議参加制度、プロジェクト・チーム編成、予算制度などで調整して いる。一方ネッ
トワーク組織というのは、情報システムの発展と創造的組織の構築という面から生まれて
きた新しいゆるやかな組織形態。情報中心型のフラット 型、チーム型組織はその一つの現れ。
○職能部門制組織
1) 特徴
 第一次的に生産・販売・購買・資材・人事・経理・技術・研究開発などのよう に専門的な知
識を必要とする同種の関連の業務ごとに職能別に専門化、部門化さ れた組織を単位とする
形態。
2) 狙い
 発展に伴うスムーズな分業の増進、経済性の効果、専門化が容易、規模の対外効 果の発揮、
組織の統制維持。
3) 短所
組織が硬直化しやすい。ゼネラリストの育成が困難。決定、調整がトップに集中 し、創造的役割
が果たせない。業務間のコミュニケーションが欠けやすい。
4) 留意点
情報伝達ルートの整備・強化、情報処理の迅速化、部課制廃止、会議参加制度、 目標管理制
度、プロジェクト・チーム編成、ゼネラル・スタッフ制、予算制度、 利益責任単位化など。
○事業部制組織
1) 特徴
第一次的に製品別、市場別に独立採算、利益・業績単位としての事業部(プロフ ィット・センター)
を編成し、これらの事業部を予算制度などによって最高管理 機構たる本社・本部によって全般的
に管理される組織形態をいう。
2) 狙い
異質な事業活動に同時に対応できる。市場の多様化に敏速に対応できる。事業評 価が正確
に把握できる。利益責任単位として現実的決定がタイムリーにできる。
3) 短所
採用は、かなり大きな企業に限定される。全社的統一制と部門間調整がむずかし い。本部と
の連携のあり方によって独自性を阻害しやすい。忌避宣言権の確立に は問題点がある。他事
業部との協調・全社的視点での判断が困難。
4) 留意点
商品別・地域別部門化の基準、分権体制の確立、本社機構の確立、利益責任制の 確立。
○マトリックス組織
1) 特徴  通常のタテ型の垂直的階層にヨコ型の水平な権限関係の2つの軸によって分業関係
を形成する。マトリックスは「行列」の意味で、タテとヨコから同時に分業 基準を採用した組織。
複数の管理者の命令下にあるメンバーがいることから「ツ ー・ボス・システム」と呼ばれることも
ある。
2)狙い
不確実性の高い問題の解決のために関連ある部署が同権限で対応できる。 市場へのよりきめ
細かな対応。横の連絡を密にできる。 恒常的対応(能率の向上)と動態的対応(変化適応性)
の両要求に応えられる。 社員の発想や視野を拡大できる。 3) 短所 命令系統に混乱をおこし
やすい。真の話し合いができないとタイミングを失したり妥協的な決定で終わってしまう。複数
指令を創造的に調整できるすぐれた人材 が多数必要となる。
4) 留意点
その成否は、結局ツーボスマネージャーの創造的調整能力(統合力)にかかって いる。こう
した管理能力はあらゆる組織でも不可欠とされる。将来の組織は一層 こうした管理者の創
造性が要求される。
○ネットワーク組織
 情報システムの発展と創造的組織の構築という面から生まれてきた新しいゆる やかな組織
形態。情報中心型のフラット型、チーム型組織はその一つの現れ。ソフトや情報によるゆるや
かな結び付きが特徴である。企業内企業、異業種間交流 などにみられる。働く人びとの間で
「ビジョンの共有」にとどまらず、日常的な触れ合いを通して 「意識 の共有」状態をつくり出し
ていく必要がある。意識の共有には人びとの日常的な交流が不可欠であり、一般的には、
フェース・ツー・フェースによるコミュニケーションが原 則で あ る。意識を共有するためには、
コミュニケーション手段の共有と社内情報の公開 (情報の共有)も不可欠になってくる。
◆電子ネットによるマトリックス組織の再生
ある程度の規模に達した企業では、効率的な活動を展開していくために、組織形態 として
事業部制と機能別組織を採用する。 その欠点をカバーする第三の組織として試みられて
きたのがマトリックス組織であ る。 一 人の人間が、特定の事業部(たとえば、ビデオ事業
部)と機能分野(たとえば、技 術・ 研 究開発部門)の両方に所属する形の組織形態である。
しかし、残念ながらこのマト リッ ク ス組織の本格的な導入に成功している企業は皆無とい
ってよい。その最大の理由 は、一 人 の人間が同時に二つの場所に身を置いて働くことが
不可能だというきわめて単純な 結論に落ち着く。 ところが、電子ネットワークを活用したビ
ジネス・システムのもとでは、離れた二 つの 部 署であっても、直接身を運ぶ必要がないか
ら、二つの仕事に締切やピークの違いが あれ ば、時間差攻撃で仕事をこなすことが可能
になる。情報は、前述したように共有で きる か ら、離れていても濃密なコミュニケーションを
維持することが可能なのである。こ のよ う に、電子ネットワークの活用によって、伝統的な
組織論の世界に安住していた大企 業に お いても、きわめて柔軟な組織運用を図ることが
可能になってきている。
◆電子プロジェクトチームによる人事配置 しかし、現場での生の実態とかい離した机上の
戦略プランほど始末に悪いものはな い。 変 化の激しいパラダイム・シフトの時代には、現
場と企画の中枢とのダイナミックな チー ム ワークが何よりも重要なのである。それぞれの
現場で自分のメインの業務に従事し たま ま、同時並行でプロジェクトチームに参加し、メン
バーの一員としての役割も果たすことができれば、それがもっとも望ましい仕事の進め方と
いうことにをる。
■電子ネット導入のインパクト
共有される情報の中には、情報源情報の一つとして、「どこで誰かどんな仕事をし ているの
か」が分かる簡単な社内のノウフー(Know-Who)のデータベースが整備される必 要がある。
仕事のニーズに沿って、適切に人を見いだすため、手元の端末から人的デー ター ベー ス
にアクセスできるようになってくれば、当然のことであるが、当事者何士で物事 のやり とりが
進むようになってくる。そうなれば、トップと現場とも直接やりとりが行わ れる よ うになるから、
組織の垂直距離は縮小し、企業組織は次第にフラット化するように なっ て くる。 一方、部門
を越えたやりとりも同時に進行するから、組織の水平距離も縮小し、部門間の壁が実質的に
意味をもたなくなり、セクショナリズムの弊害が除去される可能性が 強 まっ てくる。このよう
に、現在の組織・機構をとりあえず温存したまま電子ネットワー クを 導 入しても、企業を取り
巻く厳しい環境変化に対応していくために、実質的に電子 ネット ワークを活用するビジネス
の展開が提進されることによって、既存の秩序は否応な しに 崩 壊していくのである。 とりわ
け、コンピュータ・ネットワーク導入によって、リアルタイム・べ−スで物 事か進められていくよ
うになる。ところが、伝統的な階層組織は、そのようなハイスピー ドの マ ネジメント展開に向
くように設計されていないから、現場での出来事と既存のビジ ネス ・ システムとの乖離が、
ますます目立つことになる。既存組織は、必然的に変容せざ るを 得 なくなるのである。
もちろん、このようなことが可能になるためには、「どこで誰が何をしているの か」に つ いて
の「こと(出来事=event)」と「ノウフー(know-who)」の簡易データベース を 作って、社員の
誰でも手元の端末からアクセスできるようにする施策が必要であ る。大企業ほど、互いに
その所在が分かれば利用価値のある情報が、利用されないまま眠っ てい る のである。
とりわけ、事業部制をとる企業では、情報の相互交流が困難になっている。たいていのこと
は、一回は企業内の誰かがすでに検討しているものだし、ある部門で開発された 技術が別
の事業部のシステムに転用できるということも、決して少なくない。 もちろん、最終的な意思
決定は、プロジェクト・リーダーが行うことになるが、局 面と テーマに応じて、各人にリーダー
の役が回ってくるから、意思決定が特定の人に占有される恐れは少なくなる。こうして、
仕事の本質的な要素のひとつである「意思決定への参画」という原則が、組織に所属
する全ての人びとに保証される状況が生まれてく る。そのことが、知的生産の仕事に
おいては、何よりも重要なことなのである。 電子ネットワーク上で、「共有化」した情報を
ベースに、「共通」の目的にむかって、 「共通」の方法論で知を組織化していくプロセスを、
「共有」することによって、互いの認識フレームについての理解を深めることができるよう
になってくる。結果とし て、チー ムメンバーは、集団としての意識も共有するようになるの
である。


参考文献
組織・企業概論 Business Organization
井原市医師会ホームページ
北矢行夫/『ホロニックカンパニー』 第II章 3 ホロニック・マネジメント
ネットワークによる組織論 北矢行男 「知本主義」の経営学