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         地域医療情報ネットワークの変容


●現在の医療を取り巻く環境の変化

医療というのは間口の狭い専門家による、分業化であった。 そのなかで、病

診連携や診診連携を前提とした、地域の医療上ネットワークが組まれた。あるい

は組まれようとしていた。ところが医療保険の失敗による、医療のパイの減少と

介護保険制度の出現により、フリーアクセスの制限(介護認定を受けた者だけ

がサービスを受ける)と給付の制限、契約(ケアプラン)の出現により、より医

療の市場化が明確になり、分業したものをいろいろなサービス機関との協業化し

た形でトータルサービスを提供していく形態に変りつつある。

そのなかで、専門職の不足(人材の流動化)や、医療機関も営利企業と手を組ん

でいく必要が出てきている。在宅のシェアも多くなるが、かかりつけ医機能だけ

では解決できなくなり、かかりつけ医はチームを組んでいくほかはなくなる。

あるいは、老人患者の比率が高い中小病院を中心に、患者の囲い込みのため、医

療・介護の両分野にわたって複合経営する医療法人が増加する(「生けす」化

あるいは「マイクロソフト化」)医療と介護の両施設を併せ持つことで人的、物

的コストの効率化が図れるとともに、強力な患者誘引力にする合併やチェーン化

、グループ化といった「規模の利益」を追求する医療と介護の両分野に渡る「範

囲の経済」を追求する動きが、鮮明になるであろう。

 要するにより、医療機関の選別と系列化がはじまる。そのなかで、もう一度

地域医療情報ネットワークの意義付けを考え直す必要がある。


●ネットワークの要件

ネットワークに求められる要件としては、まず網羅性と、標準化が上げられる。

情報は欠落があれば役に立たないし、情報フォーマットが決まっていなければ

役に立つ情報にはならない。デジタル化による、効率化を追求すれば必然的に

、患者情報の管理の一元化、データベース化にいきつく。いろんな問題が残る

としても総背番号制や、ICカード化や電子カルテはその、流れの中にある。

スイッチを入れれば当該患者のゆりかごから現在までの情報が、瞬時に整理さ

れてでてくるのは、情報化を志す医療関係者にとっての夢であろう。

 

また情報は力であるから、医療の情報化により、ギルドとしての医師会の組織

防衛を図りたいという明白な意図もあった。

 

 ところが、より市場原理を明確にした、介護保険のなかで、患者を自分の

「生けす」のなかで、泳がすことを最終目標にする世界では、どこにどんな

患者がいるかという情報が、すべてを決定する。より早い顧客の発見と管理

ができない組織が、没落するのは当然である。

 


●現在の日医医療情報ネットワークの問題点

1)地域医療情報ネットの構築が明確化されていない

縦のトップダウンの一本のネットワークである

 日本医師会、都道府県医師会、郡市区医師会の間で

 1)医療政策支援情報システム

 2)地域医療計画策定支援システム

 3)医療活動・機能連携支援情報システム

 トップダウンのネットで、ボトムアップの方策が十分練れていない

ネットは二次医療圏を基本として考える

 医療は地域密着産業であり、患者さんの動きに合わせてネットを組む

のが医療ネットの基本。

患者さんの移動は二次医療圏内が大部分である。

 全国平均は

 入院71.4%

 外来83.5%

以下に詳しいことはまとめています

二次医療圏について

 郡はそのままでよさそうですが、市の場合は、周辺の町村を巻き込む

町村は人材がいないし、まとまればコストも安く済む。救急とも大体一

致するので実際的である。

 

2)構築目的があいまいである

 医師会医療情報ネットでなく地域医療情報ネット

地域の医療情報システムを構築しようとすれば、当然住民全体が対象になる。

推進母体は自治体であり、医療管理だけでなく、健康管理までを目的にする。

また、域内の、すべての医療従事者が参加できるように、体制を整える。

介護情報、患者個人情報(健康診断データ)検査データ、市、福祉、歯科医師、

薬剤師、看護婦、理学療法士等を包括した市を前面に出した、包括的なものに

する。医師会医療情報ネットではなく地域医療ネットワークの構築。

介護保険等が入ってくれば、医師会ネットではすまない。

 

参考:病診連携

HTMLブラウザを用いた病診連携システム

 

3)会員の範囲が明確でない

日医の組織化が低下している現在、ネットの会員の範囲は広げざるを

えない。情報ネットワークは漏れがあっては役に立たない。

全医師の61%しか入会していない、かつ勤務医の加入率が低い現在、

医師会員のみで、地域医療における、有意義なネットワークを組めるとは

思えない。日医案にあるごとく。「医師会組織境界の拡大として、医師会内

部の情報伝達と医師会外部の情報伝達を適当なバランスで行えるような制度

を考えなければならない」というのは同意はできる。

 医師会への情報化による入会のメリット論が述べられているが、医師会

の組織率が低い現在、まず、会員を広く取り、ネットの活性化をはかり、

ネットのメリットを出す方向性が重要。バーチャル医局を作るべきである。

 

4)横の連絡網が想定されていない

日医構想は、ゆるいWANなので、各県医師会、各郡市の会員の部屋を参照

できない。これができないと、情報の無駄が多くて困る。

完全クローズのイントラネットを作るか、各地区医師会で情報公開しクローズ

の部屋を極力なくす方向性しかない。しかし全医療機関を結び付ける、クロー

ズのネットはフランス等で企画されているようであるが、現在の経済情勢では

なかなか難しい。かつ一般市民への情報公開という面からは、完全クローズで

は意味がない。市民への情報公開をアピールするためにも、諸会議内容は、で

きるだけ公開の部屋へかいていただく方向性が大切。

 

5)文書のデジタル化が不十分

文書のデジタル化はコストがかかるんで、日医がまず

文書のデジタル化を推進し、ついで各県や郡市の情報を

公開することによって、他県の医師も参照できるようにする。

実質、医師会ネットの構築ができる。専用線による完全

クローズのネットをつくるよりもコストは安いし、情報公開

という面でも意義深いものになるのではないか。

 

6)医師会の情報開示が明確化されていない

医療情報の開示は、患者サービスの向上による医療の市場化と質の向上が

目的であるが、情報の非対称が存在する限り、かなり無理な方向性では

ある。安価な医療の提供と、医療の倫理感の徹底による信頼性の維持を

メインにすべきとは思う。

 

信頼性の維持のためには、医師会情報は原則オープンにすべきである

少なくとも医師会誌レベルの情報は完全開示でも問題はないと考える

 現在、厚生省や官公庁では審議会レベルの話を完全にオープンで書いて

いる。誰でもみれるようになっている。ここ1−2年で大分変った

 日医は会員の部屋で書いている。情報公開ではかなり遅れている。

 いままで開放していないという、単純な理由で、一律公開しないのは

ちょっとなじめない。

 国民の理解を得るには、情報を公開しないと無理であろう。

たとえば医師がすべて長者番付にのっているというのは、データによれば

大きな誤解。マスコミ発の情報だけで、何時まで立っても「医師会発」の情

報がすくなければ、誤解は解かれない。インターネットでは多いに内部を

開放すべき。そのための医師会の公開のホームページであろう。

また「一般の皆様へ」ぐらいの単なる宣伝は誰も信用しない。実際の活動情

報や、魅力がなければ、一般の方は誰も見にこないし、信用もされない。

 


●まとめ

 そういう状況の中で、たとえば介護情報の医療情報ネットワークの構築は、

1)エンドユーザである患者へのサービス(施設情報など)

2)もう一方のユーザである、医師会員のニーズを捉える

ということを目的とする場合、特に個人情報を流すことの問題がより鮮明にな

ると思われる。まず患者情報の抱え込み、医療機関間の競争の激化。

 有用な情報を流せば流すほど、会員間の格差が広げるのは本意ではないし、

微妙な利害調整のなかで、ある程度公益性を重視した、魅力的なシステム構築

ができるかどうか 非常に頭の痛い状況になり得る。

 

いずれにしても、今後のネットの構築は、

1)地域医療情報ネットワークを構築する

 二次医療圏を基本とし、医師会でなく自治体を基本として組む。

2)会員は広く取る

介護情報、患者個人情報(健康診断データ)検査データ、市、福祉、歯科医師、

薬剤師、看護婦、理学療法士等を包括した市を前面に出した、包括的なものに

する。医師会医療情報ネットではなく地域医療ネットワークの構築。どちらに

しても関係者も多く、複雑なものにならざるを得ない。

3)情報公開する

 情報開示が全国の医師会のネットワーク構築には必須。

 患者情報以外は原則オープンとする。