地域医療情報システムについて2001年8月29日

本田整形外科クリニック 本田忠


医師会とは
 社団法人は、一定の目的のもとに結合した人の集合体であり、団体として組織、意思等を持ち、社員は別個の社会的存在として団体の名において行動する。また、主に公益を目的として社員の総意の元に、管理運営される。

地域医療情報システムの受け皿である


医療の現状
1)毎日発生する医療情報は、多岐にわたりかつ多量である。
システマティックなものとはなりずらい。
2)地域内に多種多様の施設があり、おのおの独立している。
 医師同士のコミュニケーションをはかる機会は少ない
 医師は非常に忙しい。会議にもなかなか出席できない
3)組織は、ピラミッド型で運営する(委員会方式)
 情報伝達法が洗練されず、限られるために、組織をピラミッド化して、サブシステムの、小さなグループ内でのみ、情報を共有化することで、問題解決にあたる。
4)医師会会員の高齢化
5)コスト削減
  人件費の高騰。医療費の抑制。

従来の情報伝達法の問題
1)通信網の未発達
 ファックス、郵送や電話は、一対一のメディアである。大量の情報を流すには煩雑であり、高コストである。
2)学会、会議
 知識が高度化すればするほど、会が活発になればなるほど、会合は増える。集まるには時間が取られる。コストもかかる。会議は常に時間は足りない。予算もない。回数も開けない。
情報の分断化。通達の不徹底。情報過疎により、会員は組織への参加意欲に乏しい
結果的に意志決定の遅れとなる。社会の変化に対応できない

目標
より合理的で緊密な、医師のネットワークを作る。
医師の情報リテラシー(利用能力)の向上をはかる。
国民の皆様へあるべき医療の積極的な宣伝をする。


Solution


IT革命 Information Technologyの革新

IS   InformationSocietyの形成
real真の
Networkネットワークの形成
技術が変わる
情報が変わる
社会が変わる
組織が変わる

It is a real Network


技術が変わる

○高度情報通信インフラ(高度ネットワークシステム)
マルチベンダ方式のオープン分散型システム
ADSL(AsymmetricDigitalSubscriberLine)
CATV(CommunicationAntennaTelevision)
通信衛星。
セキュリティ技術(PKI:PublicKeyInfrastructure)
○ハードウエア
1)ダウンサイジング化(小型化)。端末の高機能化
2)携帯情報端末
 PDA(PersonalDataAssistant)、携帯電話端末、PHS端末
3)ICカード、光カード
 データキャリアとしての役割は二義的なもので、セキュリティ機能(個人認証ツール)としての役割が期待できる。
○ソフトウエア
1)ソリューション重視
 顧客の経営課題をITと付加サービスを通して解決する
2)マルチメディア化(文字、画像、音声の利用)
3)オブジェクト指向プログラミング
4)グループウェアシステム
5)バーチャル・リアリティーシステム
 3次元画像処理による、バーチャルオペ支援
6)ASP(ApplicationServiceProvider)サービス
7)カルテの電子化
8)画像情報システム(PACS:PictureArchivingandCommunicationSystem)

情報が変わる

IT革命 Information、Technologyの革新
デジタル化  二次利用が容易にできる。
公開する   情報公開する。不特定多数
集中する   データは一箇所に集中する
検索できる  データベースは網羅性が命。
低コスト   情報を容易に伝えることができる
知の共有   同じ情報で考える
双方向性   討論する
迅速化    時間と空間的距離がゼロになる
決定する   意思決定が迅速になる。

社会が変わる

IS  InformationSocietyの形成
2001年5月現在インターネット人口は4500万人。主要国の中で最低レベル
政府のeJapan戦略(2001年1月22日)
 情報流通の費用と時間を劇的に低下させ、密度の高い情報のやり取りを容易にして、知識創発型社会に移行。
重点政策分野
1)超高速ネットワーク
5年以内に全世帯が高速インターネットアクセス網に1年以内に、すべての国民が常時接続する。
2)電子政府の実現
 文書の電子化、ペーパーレス化及び情報ネットワークの構築。2003年度には、電子情報を紙情報と同等に扱う行政を実現。
3)人材育成の強化
 すべての国民の情報リテラシ−の向上を図る。

知識資本主義社会の成立
1)知識資本主義(ナレッジ・キャピタリズム)
 知が財産となる。知恵や知識が経営資源となり、商品やサービスとなる。
情報公開により、医師の選別化が行われる。医師の専門性がより重要となる。専門家でありつづけるためには、不断の自己教化が必要である。生涯教育の重要性があがる。
2)顧客中心市場(バイヤー・セントリック・マーケット)
顧客にとって、ガラス張りで、開かれた市場のプレイヤーでないと生き残れない。医療の透明性の確保し、患者サービスの向上を図る。

組織が変わる

Knowledge Management:知識管理
 個人や組織が持っている知識を共有化する。新しい「知」の創造
1)情報のフラット化
 情報テクノロジーを駆使して、情報を早く正確に、組織の全員に伝える
2)暗黙知と形式知
 暗黙知を見えるようにして誰もが使えるようにする。暗黙知は話し合いなどのコミュニケーションを、繰返すことによってグループ内に広がる。組織内の緊密な人間関係と、日常的な会話が大切である。

バーチャル会議
1)情報の共有:時間空間関係なく討論。
2)情報公開:組織のアカウンタビリテイの向上
 未決済文書を含んだ、積極的な開示。
3)全員参加:ネットワークは人と人のつながり
4)全員発言:参加者が発言しないと会議にならない
5)各自の情報リテラシーをあげる。
 意見開示のためには、技術を習得する必要がある。

ネットワーク形成による従来の意思決定法の変化
 社団法人は、会員の総意の元に運営するものである。会員を情報過疎においては、会の運営は出来ない。
1)会員の意見を聞く
 従来より多くの方の意見を吸い上げることができる
2)各専門委員会等で討議と答申
 バーチャル会議で代用できる
3)理事会の討議と決
 バーチャル理事会で代用できる
4)総会あるいは代議委員会で決定
 構成員全員が入れば代議委員会に変わりうる。

バーチャル医局 全員が毎日参加できる
バーチャル会議 論議を尽くす。迅速化、経費削減。
バーチャル学会 いつでもどこからでも参加できる。
バーチャル総合病院:診診連携(地域、全国)一患者一カルテ


結果


間接民主主義から直接民主主義へ
1)迅速な小回りのきく組織が出来る。
2)組織の活性化がはかれる
 構成員がレベルに関係なく情報を共有し、参加意識が高まる。
3)組織の経費削減、合理化


実際


Hardware
Software
Homepage
Mailinglist

Hardware
1)Server
 CPUはpentium2。200mhz。メモリは640M
(写真をつける。)
2)LineOCNエコノミー 128kbps

Software
OS:Window−NTver4.0
Software:IIS、Sendmail,Listserver、FilemakerPro
アプリケーションプログラムはすべて自作です。

初期投資 170万。
維持費
 回線代(3万/月) 管理費 無料(ボランティア)

HomePage
1)情報倉庫である。あらゆる情報を集中する。
 情報のデジタル化 データベース化
2)対外宣伝と対話(一般、会員)
実際
日本臨床整形外科医会
八戸市医師会

Mailinglist
 会員相互の討論の場。親睦の場。情報伝達の場
 ネットワーク上での情報のほとんどはここで流れる。
実際
(アウトルックの立ち上げ)

ホームページに情報は、蓄積され、いつでも誰でも検索できる。
ホームページにかかれた内容はメーリングリストに自動的に流れる。
ホームページとメーリングリストは有機的に結びつく


実現済み

1)アンケート発生源入力方式
 アンケートをデータベース化してネットで公開する。 直接ネット上で入力。データは自動的に集積される。
2)インターネット委員会(バーチャル委員会)理事会
 任期中会合は当初の1回のみ。メーリングリストで行う。毎日会議状態で、時間は無制限。ファックスは、月数枚以下。
3)情報の公開
 ネット上で全文を検索できる


ネットの利点
受け手サイドから見た利点
1)医学情報提供:医療機関マップ、最新医学情報など
2)遠隔診療:情報格差が解消される。在宅医療がうけやすい
3)一患者一カルテ
 診療情報を医師と共有できる。窓口での受付の簡略化。検査の重複がなくなる。

提供者サイドから見た利点
1)最新医学情報が取得できる。
2)院内外での診療情報の共有化
 チーム医療や、地域医療機関相互(病診・病病)での連携の強化
3)正確で大量の医療情報が蓄積される
 データを解析することにより客観的評価が可能となる。
4)情報開示:デモンストレーションが容易に行える。
5)チェックシステム
 薬の過剰投与や不適切な指示に対する警告
6)経営の効率化
 院内物流管理や医薬品・医療材料の電子商取引が可能
7)レセプト電算処理の導入
 レセプト請求事務の省力化、ペーパーレス化


問題


個人としての問題
1)普及率が低い  普及率が低いと利点が十分でない。
2)情報リテラシーが低いと自己表現できない。
  自己トレーニングが必要。操作法の習熟。情報処理能力を上げる。
3)情報負荷
 従来は網羅的、量的情報は、コストがかかりすぎて、出来なかった。
 情報過多は、情報過疎よりは望ましい。豊富な情報から各自が、取捨選択して討論できる。
4)会議は、直接顔を会わせることが大切?
 文は人なり。文の後ろには書いた方の汗がある。 情報伝達の目的が、お互いの完全相互理解ととらえるなら、パピルスこの方、すべてのメディアは制限メディアである。インターネットが制限メディアなら、実際の会議も制限メディアである。

システムとしての問題
1)プライバシー保護
万全なセキュリティ対策をとらないと、社会的支持が得られない。電子認証システム、カルテの外部保存の問題。
2)電子化=セキュリテイが甘い??
 総合的な運用の問題。デジタル化とは直接の関係はない法的な整備が、情報漏洩の抑制には一番効果がある。
3)セキュリテイは本当に必要なのか?
 積極的に公開することで、組織の透明性を増す。
4)標準化
 カルテの用語、コード、様式等の標準化を推進する
5)ユーザビリティ
 利用する立場に立って開発する。
6)経営の効率化
 医療業務全体のコストダウンに寄与できる。

法的問題
1)表現の自由を確保する。
憲法第二一条(集会・結社・表現の自由、通信の秘密)検閲や削除は正当な事由がなければできない。正当な事由は厳密に規定される。
2)情報公開法
 決済前の文書も、公開する。非開示とするには明確な理由が必要である。 組織のアカウンタビリテイの向上を図る。情報の共有に必須。
3)違法な情報発信に対する現行法の適用
 オフラインで違法なものはオンラインでも違法であり、違法な情報流通に対しては、まずは、現行法の適用で対応すべきである。
4)管理
 管理者が利用者のコンテンツに問題があることを理由に、発信者への注意喚起、削除、利用停止及び契約解除等の措置をとることは、電気通信事業法(第3条、第4条、第7条及び第34条)上、可能である。ただし表現の自由を侵してはならない。
5)名簿の公開
 公的機関の名簿などは個人情報とはとらえられていないという判例もある。もとより、あくまで個人の同意をとるべきとは思うが、アナログでもデジタルでも区別はない。非開示とするには明確な事由が必要である。

医療機関の情報化の現状
○診療録の電子保存を認める通知,平成11年4月
電子カルテ。ネットワークを介して患者情報の共有化。
○エックス線写真等の光磁気ディスク等への保存について1996.5.16
レントゲンのデジタル保存が許可された。
○EBMに基づく最新医学情報データベースの構築
○レセプト電算処理システム、262医療機関での稼働(13年1月現在)である
 日医主導のORCAの開発
○遠隔医療システム、平成9年12月の規制緩和を進める通知
専門分野における地域医療機関相互支援、在宅医療への応用

進化型オンラインレセプトコンピュータシステム
ORCA(OnlineReceiptComputerAdvantage)について
導入スケジュール
1)2001年9月試験運用。CDROMで配布
2)2002年3月本格運用(第1次募集は2001年秋頃を予定)
3)入院は、200床以下での利用を想定。

システム
1)LINUX
クライアントは、WindowsやMacintoshでの利用が可能
2)各医療機関で必要な主な機器構成
 最小機器構成はパソコン2台。プリンタ。ICカード端末
3)日医でのデータ利用
 暗号化して保管。同意のもとに利用される。
4)電子カルテの開発
電子カルテの開発キット(SDK:SoftwareDevelopmentKit)としての提供各医師、各ベンダが独自に、電子カルテを開発できる


前提条件


組織にとって必要なこと
情報公開
 組織内の情報は、できるだけデジタル化して、情報をネットに蓄積する。
説明する
 組織の透明性と、アカウンタビリテイが常に問われる。
規制しない
 民主主義的空間を作る。自己規律。あくまで対話で妥当な意見に収束させる。情報の利用は、あくまで自己責任の原則で行う。
倫理の向上
 対外的にも内部においても最も有効なプロパガンダ
 組織の透明感をます

ITをうまく活用するには
トップが率先してIT化を進める
中高年層に徹底して情報ツールを教え込む
電子と紙のダブルスタンダードを許さない

個人の必要条件
コンピュータ・リテラシーでなく情報リテラシーを
1)コンピュータ・リテラシーは重要ではない
 コンピュータを使える能力、ソフトを、きちんと使えるようになる。
2)情報リテラシーが重要
情報の入手
 ・無駄な苦労をせずに、目的とする情報を得る
 ・複数の情報源のうち、適切なものを選ぶ
情報の理解と評価
 ・根拠として提示されている事実を、自分で確かめる
 ・書いてある説明が論理的で科学的かどうか、評価しながら読む
 ・異なる意見の中から最良なものを選ぶ
情報の的確な作成
 ・事実をきちんと調査したり、適切な方法で正しく実験する
 ・論理的かつ分かりやすい形で情報を作成する(ワープロなど)
 ・情報を加工し、評価しやすい形に整える(表計算など)
 ・情報を標準化やコード化して、使いやすく整える(データベース)
 ・正確かつ効率的に仲間と情報交換する(電子メール)

個人にとって必要なこと
参加する 普及率があがればあがるほど有用。
発言する 相互理解につながる。積極性がすべて。
大量の情報がある
  情報リテラシーの向上 トレーニングが必要な文房具
  豊富な知識と情報を交流し得る人材の育成。
自己責任の原則
 発信者は、公然性を有する通信における、情報発信に伴う責任と、リスクを十分に認識して、利用すべきである。
 受信者においても、インターネット上の情報の中には、信頼性の低いものや、犯罪性のあるものもあることを自覚し、自己防衛に努めることが必要である。
 ネットワーカーになる。


まとめ


より魅力ある会にしましょう
 旧態依然とした組織のままなら、会は魅力がなくなる。何よりも時代に取り残される。
情報リテラシーの向上をはかりましょう
 インターネットは自己トレーニングが必要な文房具です。
ならば自己トレーニングを
自分自身をかえない限り、会は変化しない。進歩もしない。
旧態依然とした自分を、変えましょう。
刺激的な毎日をおくりましょう。
ITは、一つの便利な道具に過ぎない。それを使って成果をあげるのは、あくまで人間・組織である。

是非皆様のご参加をお待ちしております。
ネットで毎日お会いしましょう

インターネットは楽しい


参考文献

01/06/21 第4回保健医療情報システム検討会議事録