災害情報ネットワーク


○はじめに

我々は、日常、多くの危険に囲まれて生活しています。交通事故、火災、地震、津波。台風による水害。
それらの伝統的な災害に加えて、最近は今回の東海村の原発事故のごとく新しい災害も発生します。
青森県も大間の原発や小川原湖の備蓄基地もあり、ひと事ではありません。八戸市における地震は
寛文7年(1667年)八戸を中心としたM6.0−6.4の地震から、平成6年の三陸はるか沖地震まで
数多くの地震が記録されています。青森県東方沖の地震はプレートの沈む込による、やや深い地震。
西部の津軽地方の地震は地殻内の浅い地震が多いようです。津軽地方内陸部では18世紀に地震が
多発しましたが、最近大きな地震は起こっていません。津波については、岩手県田老町ホームページ
に記載されているごとく、貞観年間(869年)の「陸奥国大いに震いて城邑を破壊し、海壊哮吼して
溺死者多し。陸奥国大いに震動し流光昼の如く隠映し、少頃にして人民吋呼伏して起る能はず。或は
屋倒れ圧死し、或は地裂け牛馬駭き走り、或は相昇踏し、城郭倉庫門壇垣頽落顛覆するもの数知ら
ず。海上哮吼の声雷雲に似たり。驚濤涌潮汽潮張溢し、忽ちに城下に至り海を距る数千里浩々其涯
際を知らず原野道路随って隠濘したり。船に乗ずるに逞あらず、山に登るに及び難く溺死するもの数
千人、資産苗稼殆で子遣いなし」という記載からはじまり、数多くの記録が残されています。災害はか
ならず起こるものとして、日頃から備えておく必要があると思います。

○災害事に必要な情報とは 阪神大震災の例を取れば、災害発生時に関係機関および住民等が必要とする情報は、災害発生から の時間経過とともに推移していきますが、大きく分けて災害時と復旧時の情報には次のようなものが上 げられます。 (1) 災害時(災害発生後72時間以内) ・地震規模や余震の情報 ・建築物・道路・鉄道・ライフライン・空港・港湾等の被害状況についての情報 ・出火点や延焼状況についての情報 ・地域住民の安否情報、避難路の状況に関する情報 ・救援・救護に利用可能な施設・資材・人材に関する情報 ・必要とされる救援・救出活動の内容やニーズに関する情報 ・救援・救出活動の進捗状況についての情報 (2) 復旧時(災害発生後72時間以降) ・利用可能な施設・物資に関する情報、生活情報、行政サービスに関する情報 ・地域全体の被害や副次的被害に関する情報 ・行政の復旧・復興計画についての情報 ・被災者支援団体・ボランティア情報、安否情報。 これらの情報のすべてを、行政機関の責任において提供するのが理想であるが、阪神・淡路 大震災の際には約2日遅れたと言われている。そして、その間の情報は個人の責任の元で行 われたものだとも言われている。今後の災害に対応するための情報発信のしくみとしては、す べての情報を行政の責任の下で発信するのではなく、個人の責任の下で行われる情報発信を どのような形でサポートするか、出来るかといった視点も重要である。 いずれにしても、求められる情報の種類は整理すれば、そう多いものではありません。量的には 個人個人で違うのできめ細かさと膨大な量が要求されます。
○災害時の状況 しかも 1)平常時の組織は機能しない 阪神・淡路大震災は早朝に発生しました。勤務時間外であり、交通機関も寸断されており、阪神 ・淡路大震災では、初動対応において平常時の組織が機能しなかった。 2)連絡が取れなかった 電話回線の断線や輻輳(ふくそう)により、安否確認などの緊急時対応に不可欠な情報連絡や業 務上の連絡等に大きな影響がでました。3)交通機関は途絶する 阪神高速道路をはじめとする道路交通、JR等の鉄道、神戸港を拠点とする海上交通のいずれも がマヒしてしまいました。 4)誰かが助けてくれる? 阪神・淡路大震災では、消防署に救急車の出動要請が数多くありましたが、大規模で同時多発的 な災害であったため有効に対応しきれませんでした。 初期消火や人命救助、応急救護などは、地域やテナント同士が助け合って行うことが重要です。地 域の一員として、日頃から連携をとることが大切です。 5)緊急物資は手に入る? 災害発生後、すぐに必要な物資が確保できるとは限りません。 以上のような状況のもとで、具体的に個々の方が以下のようなことをどの様に考えていくかという問題 になってくると思います。
○何を想定するのか 家族はどうするのか(年寄り、子供) 家はどうするのか 火がでたら 電話が使えなかったら 停電したら 避難場所が危険だったら 飲料水が取れなかったら 備品の準備が無かったら 道路が寸断されたら 山が崩れたら 怪我人が出たら 水漕、消化栓が使えなかったら 初期消火方法を知らなかったら 報道への対応(デマ含む) 平時において、それぞれに可能な限り対処できるようなシステム作り。お互いの助け合い、自分の 身は自分で守るという意識が大切なのでしょう。日頃から、おたがいの防災意識を高め、災害に強 い町作りをすることが大切なのでしょう。たとえば高齢者にやさしい町作りをすれば、それがそのま ま防災にも役立つことになる。
○日頃の準備は 1)日頃から被害を想定する。住民への衆知。 被害がどの程度になるかを想定しなければ事前対策も緊急時対応対策もたてられません。最近は、 各地域では以下のような対策が取られつつあるようです。 1−1)斜面カルテ  地元住民、ボランティア団体等の協力を得ながらがけ崩れ危険箇所を調査し、斜面に関する情報 を時系列的に調査票に整理し、データ管理を行うことにより、亀裂や異常な湧水等がけ崩れ発生の 前兆現象をいち早く把握し、斜面の崩壊による災害の未然防止や警戒避難体制の強化等に役立て る。 1−2)ハザードマップ 平常時に災害の危険性についての住民の理解を深め、発生時に円滑な避難行動をとることができ るように、水害や土砂災害などの被害を受ける危険のある区域や避難場所、避難経路などを示した 地図で、市町村が作成し住民へ配布するもの。 去年は弘前で岩木山のハザードマップが配られ好評だったようです。岩手山の噴火のハザードマッ プも高速道路のインターチェンジなどにはられています。八戸には津波などのハザードマップはまだ 作られていないようです。 1−3)道路防災カルテ 日常の道路パトロールなどの際に、斜面の変状を容易に発見することにより、対策や通行規制など 、的確な対応を可能とするためのチェックシートであり、点検箇所ごとに想定される災害、点検の時 期、点検の方法、点検すべき変状の位置、内容、災害要因を把握した場合の対応策を記している もの。 1−4)グリーンオアシス  広域避難地となる防災公園等の避難圏域において、地区全体の防災性の強化と生活環境の向上 を図る観点から、地区単位での一括採択事業(=グリーンオアシス緊急整備事業)として、低・未利 用地の機動的な買収等による多様な緑地(=グリーンオアシス:地区内に3ヶ所以上で1ヶ所の面積 は500u以上、整備後は都市公園として管理)の整備を推進する。
2)初動対応マニュアルが必要 大規模地震が発生した直後には、求められる情報をいかに的確に伝えられるか、対処できるか、行 うべき事項を規定した手順書が必要。項目だけでも決めてあると行動の指針となり、初動対応が違っ たものになるでしょう。
○情報伝達手段は 情報収集・連絡手段としては、携帯電話、PHS、アマチュア無線、専用回線、トランシーバーが主流で す。衛星通信、インターネットも新しい手段として使われますます。 1)非常時の通信設備・機器の特徴 一般加入電話 いくつかの電話局を経由して、相手方の電話に接続される。災害時にはケーブルが切れたり、通話が しにくくなる。 専用線 特定のユーザーの専用の回線のため、輻輳のおそれが少ない。一般加入電話に比べ復旧が早い。 携帯電話 無線中継局までは無線でつながる。加入者数が増えており、輻輳のおそれがある。 トランシーバー 交信は2〜5kmの範囲に限られる。無免許で使用でき、また安価である。 アマチュア無線 業務のための使用は認められていないが、社員有志による交信は可能。交信範囲は数kmのものから 海外まで交信できるものまであり、資格により異なる。 衛星通信 通信衛星を経由して拠点間の通信を行う。地上の回線が使用できないときに有効。他の通信手段に比 べると高価。 パソコン通信 相手が不在でも通信が行える。ISDN(総合デジタル通信サービス)回線を使用すると比較的輻輳のおそ れが少ない。パソコン通信の主催者に対して加入費が必要。 公衆電話 優先回線が使用されるので、比較的かかりやすい。阪神・淡路大震災の経験から、今後の大災害時に は無料化される。 それぞれ利点欠点があります。連絡手段には絶対確実というものはなく、連絡手段の種類を増やすこと です。また、自転車・バイクで情報伝達をしたほうが、電話で悪戦苦闘するより効果的です。 また、災害時には既存のシステムのみでなく、外部から大量の資源(人的、物的)が入り込みます。従って 既存の施設のみの連絡網を前提としたシステムでは役に立たなちません。また情報を何らかの形で末端 まで周知させる、効率的な情報連絡網を構築する必要があります。どれだけ毎日の情報を整理して、不特 定多数の関係者全員に周知、宣伝できるかが問われる。小回りが利いて、情報の流れが双方向であり、 どこにいてもコミュニケーションが出来ること。時を選ばずに情報の発信・受信ができること。誰もが対等な 立場となれること。行政の境目や国境などがまったく取り払われ、どこからでも情報を取れることが大切で す。あらゆるレベルから総合的に情報集中させ、公開し、情報交換する場が必要になる。 最近の注目すべき動きとしては第3セクターの(株)八戸テレビ放送(HTV)による消防情報システム。これ は火災発生等の際、消防本部から上り回線でケーブルテレビ局のパソコンに録音を行い、加入者宅のホ ームターミナルのブザーを鳴らし、加入者がテレビをつけ特定のチャンネルに合わせると、発生場所や状 況を音声で提供するシステムです。株式会社テレコム八戸によるコミュニティ放送局BeFMの開局。NTT 東日本の八戸支店による防災訓練用のホームページ開設などがあげられます。安否情報は、NTTの全国 利用型伝言ダイアル(ボイスメール)やインターネットの生存者情報データベースなどを利用することもひと つの方法です。 しかし一方では今回の東海村の原発事故もそうですが、災害が起こるたびに対策の不備が毎回かならず 指摘されます。青森県には多くの自治体のホームページがありますが、チェックしてみますと、まだ観光情 報が主で、災害に関する情報は八戸市をはじめとして皆無です。全体としてはまだまだ広報不足です。
○災害情報ネットワーク 災害対応総合情報ネットワークシステム外部仕様検討報告書(厚生省) によれば、 1)インターネットによる情報発信 阪神・淡路大震災では、情報発信の手段として、インターネット/パソコンネットが用いられた。アクセス手 段を持たない利用者に対しては、別のボランティアによりFAX等を用いて渡された。 2)システムの機能要件 行政インターネット  県庁、合同庁舎、関係機関、市役所および避難所となるべき公民館、学校等、災害時に活躍するであろ う機関を、一般のインターネットのような「フラットでシームレスなネットワーク」で接続する。階層関係に囚 われない情報交換が可能となる。 3)システムの分散化とバックアップ機能  大規模災害の発生を想定し、一回の災害の発生ではデータが失われないように 、システムおよびデータのバックアップを行う。 4)情報交換の機能 「行政インターネット」によって接続される県庁や市町村、関係機関および住民等の間でシステムと接続す るコンピュータを通じて双方向での情報交換を行う。ただしコンピュータを持たない住民との情報交換にも 配慮し、災害発生時に住民の避難所や住民との接点となる施設に、市町村等の行政側で端末機等の機 器を設置し、情報交換を可能とする。また、外国人や障害者等のいわゆる災害弱者にも考慮した、人に やさしい情報交換のインタフェースを実現することが重要である。 5)ネットワークの伝送路 情報を伝送するネットワークの伝送路は災害耐性のあるものである必要がある。 6)多様な手段での情報交換と双方向性 例えば県主導のBBSとインターネットを連動させ、それぞれの掲示板やメールをゲートウェイすることで、 情報共有を図る必要がある。また、情報の伝達は一方向でなく、双方向である事が重要である。情報が 一方向にのみ伝達されるのでは、住民に対するサービスという意味では不十分である。例えば、問合せ と返答、要望と回答という形で一対となり双方向でのやり取りが実現する事が望ましい。 となっています。
○システムのポイント 1)毎日の日報や集計を同じ場所に書き込める体制を作る  インターネット上の災害情報ページを利用して情報の鮮度をあげる 2)内容はできるだけ具体的なものを  細かい物資情報や状況が最も大切 3)各施設間、組織間の横断的な連絡網の構築に最適  誰でもみれる、誰でもかける場を作り上げ、そこに集中的に情報を集積する。情報の質も問われる 4)多数の組織で統一した場所に書くこと  縦割り行政ではこれが最も大切。また書き込む方のトレーニングを常日頃行う。各部署で責任者を複 数きめ、必ず毎日書かせる。現場では広報が最も大切。 5)情報フォーマットを決める 情報の整合性と何が求められているのか。常に考えること。阪神震災に良く学ぶべき。
○まとめ 以上のように、各メディアの特徴をうまく使いわけながら、情報を統合し整理して かつ同時にそれを皆に無駄無く伝えられるシステム作りが大切と思います。 災害情報システムは何も特別なものではなく、日頃から地域のネットワークを構築していれば、それがそ のまま災害時には相互扶助システムになっていくということなのでしょうが。現在の技術レベルでは、各分 野の同意さえ得られれば、きわめて安価なおそらく数万円で構築できます。インターネットのよりいっそう の普及と習熟が待たれます。
○参考文献 地域コミュニテイの構築 全国のハザードマップリスト 地域防災システムを考える 地域防災システム 危機管理型防災対策の構築 消防情報システム (株)八戸テレビ放送(HTV) 自治体別・提供情報一覧 (東北地方 青森県) NTT防災訓練用のページ 青森県の地震 過去の被害地震 青森県の活断層調査 【入内断層】 ヤマセに関連した主な参考文献(年代順) 田老町ホームページ・防災 緊急カード作り 防災ネットワーク 避難地図 家族及び近所の人たちと協力して応急措置につとめることが肝要である。