多施設研究プロジェクトとネットワーク2001/09/13up, ver:2001/10/29

本田整形外科クリニック 本田忠


はじめに

 最近は多施設で共同研究することが多くなりました。前回はアンケートを取るだけでしたが、今回はすこし発展させて、チェックシステムを入れてみようと思います。アンケートを取るだけですと、入力ミスが多く、貴重な報告が無駄になることが多いので、経費をかけずに、症例をきめ細かくチェックできないかと言う問題です。アンケートと統計処理ソフトのお話

多施設研究の実際

1)症例選択
 調査対象となる症例が、本調査の選択基準を満たしているかどうかのチェック。
2)症例登録
選択基準を満たしていると確認された患者を、参加医師に割り付け、登録します。
3)データのチェック
 参加医師より送られてくるデータの入力ミスなどのチェックを行います。結果を参加医師に確認します。
4)解析
データ解析は通常、中間解析、主要解析、副次解析、効果の統計処理と4段階行ないます。
5)プロトコ−ルの修正
時には中間解析の段階でプロトコ−ルに修正を加える場合もあります。
6)報告
以上ですが、厳密に行えば行うほど、参加者間の連絡が密になり、経費も期間もかかります。

ネットワークを利用したシステム

1)ネット上にデータ入力データベースdbを作る
 データ入力用である。同時に初心者対策でエクセルでも作る。
2)メーリングリストMLを立ち上げる
 管理用グループと参加者をあわせたMLひとつだけでも可であるが、あるいは参加者グループと管理グループを分けても良い。管理用グループのメーリングリストがいわばバーチャル管理センターとなる。
3)前提条件
3−1)管理グループを含め、参加者全員が、メールが読めて、かける環境にあることが必要です
3−2)ネット上でうごくデータベースと、メーリングリストが1-2個必要です
ネット上で動くデータベース
メーリングリストの作り方

詳細

1)データ入力
インターネット上のホームページにアンケート入力用データベースdbを置く。初心者対策として、あるいはデータ量が多いことを考慮して、同じものをエクセルでも組む。これはホームページからダウンロードできるようにする。
ネットにいちいちつながないでも入力する道も残す。ネットだと時間がかかりすぎる場合があるため。また初心者対策である。エクセルはそのまま、メール添付であるいは、csvファイルをメーリングリストに流していただければよい。
2)メーリングリストML
 管理用メーリングリストに管理者グループGと,管理センター、参加医師グループG全員に入っていただく。あるいは管理GのみMLと参加者と管理者MLあわせたものの2つのMLに分ける。
3)データチェック
 参加者がおのおの、症例をアンケートdbへ入力すれば、管理MLへ記入された由の文が自動投稿されるようにする。
例;件名:newdata
本文:データが入力されました。データベースURL(http://www.*****)へいき確認。評価ください。評価はこのメーリングリスト上でしてください。
あるいはデータ全文を流すことも可能である。おしらせメール内容は自由に設計出来る。管理ML上で管理グープが各位で十分評価して、採否の決を取る。
4)評価のフイードバック
 メーリングリストMLへ当該施設記入者も含まれているので、データ可否はいちいち周知する必要はない。あるいはMLを2つに分けたなら、責任者が別な参加医師MLへ評価を流す。念を入れるなら、同報メールで、参加者個人にも流す事も可能である。
5)統計解析
 解析者へは逐次csvファイルかエクセルで全データを提供できる。
6)データ保存

全データは管理メーリングリスト参加者全員のPCに保存される。修正もメーリングリスト上に記録される。プリント(copy)は参加者各位が行う。

7)セキュリテイ
6−1)データ入力;入力時はホームページ上でパスワードで保護された入力画面にはいる。またデータベースへのデータ入力は、あからじめ、各位にしらされたパスワードを使用して入力する。ダブルでチェックができる。また暗号メールを使う事も可能である。

6−2)メーリングリストは参加者以外、見る事はできない。書き込む事もできない。実データ、データ選択、修正、すべて管理者、あるいは参加者各位のPCに保存される。サーバにも保存される。

6−3)2001年の千葉の日本整形外科学会のシンポジウムにおいて、小生が厚生省に確認したところ、ネット上のアンケートは、個人が特定されなければ問題ないとの言質をえております。
 従って患者名と施設名は記号か頭文字等にすれば問題ないと思います。


まとめ

 多施設参加による症例調査は、ネットワークを上手く利用すれば、データベースとメーリングリストを上手く組合せたシンプルなシステムで、経費もほとんどかからずにできます。

用語の説明
1)テキストファイル
 テキストを内容とするファイル。フォントや大きさ、罫線などの書式情報を含んでいない文字列から成り立っているファイルです。テキストファイルは、ほとんどのコンピュータ・アプリケーションで読み込むことができます。Windowsでは、テキストファイルの作成は、メモ帳などを使用します。
2)CSV形式のファイル
 CSV形式のデータは、カンマで区切られたものです。MicrosoftExcelで作ったファイルをCSV形式として保存する場合は、列のデータがカンマで区切られ、行のデータは改行記号で区切られます。文字列と数値だけが保存されます。
3)CSVファイルをエクセルに取り込む
 まず、Exelを起動して下さい。次に[ファイル(F)]メニューの[開く(O)]を選択します。開くファイルを指定するウィンドウが開きますので、開きたいファイルを指定して下さい。このとき、ファイルの種類はデフォルトでは[MicrosoftExelファイル(*.x*)]になっておりますので、[全てのファイル(*.*)]または[テキストファイル(*.prn;*.txt;*.csv)]にして下さい。開きたいファイルを指定して[開く(O)]のボタンをクリックすればテキストファイルウィザードが起動します。
 テキストファイルウィザードの最初の画面では"元のデータ形式"として、"カンマやタブなどの区切り文字によってフィールドごとに区切られたデータ(D)"を選択して[次へ>]のボタンをクリックして下さい。
 次のページでは区切り文字を指定します。前述のようにCSVファイルはカンマ区切りですから、"区切り文字"のところで"カンマ(C)"を選択して下さい。これで[完了]のボタンを押せば表形式でCSVファイルが読み込まれます。

参考文献

guidance for Industry computerrized systems used in clinical trials :U.S.department of health and Human Services Food and Drug Administration.April 1999

アンケートと統計処理ソフトのお話
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李 啓充(マサチューセッツ総合病院・ハーバード大学医学部助教授)